スペックルをどのように利用するのですか?
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生体内部の散乱粒子は、血球に代表されるようにいつも動き回っているものがほとんどなので、観測面上の全ての点で、干渉条件が時々刻々変わっていきます。 実際生体から発生するスペックルは、非常に早い速度で模様を変えていきます。下図のように、観測面が生体表面の像面になっていれば、生体上のある点とその 像点とは、一対一の関係で結ばれます。すなわちある像点のスペックルの変化速度は、対応する物体上の点の近傍にある散乱粒子(ここでは血球)の移動速度に よって決まり、前者は後者とほぼ直線的な比例関係にあります。生体表面のある点の血流速度が低下すれば、対応する像面上の点のスペックルの変動は遅くなり ます。したがって像面上の各点について、スペックルの時間変化率を求めてマップ状に表示すれば、それが即ち血流速度のマップを表わすことになるのです。



像面上のある点の光強度変動に、どの範囲の散乱粒子の動きが関与するのかという問題は、極めて難解です。現在までに解っていることを整理すると、以下の2つの要素を考慮する必要があります。

1 どんなシャープな結像系でも、収差や回折効果によって、点物体を像面上で完全な点に結ぶことはできません。このことは逆に、像面上の点には物体面上のある 小さな面積から散乱してくる波面が重なり合うことを意味します。これはLSFGシステムが、どのくらい細い血管の血流を測定できるかという問題に関係しま す

2 レーザーは生体の内部に入って行くにしたがって拡散し、吸収されていきますが、生体表面のある点から結像系に向かって出てくる散乱波面は、生体の内部でい ろいろな経路を辿ってから出てきます。生体のごく表層で、あまり多く散乱せずにすぐ出てくるものもあれば、相当奥まで侵入してから出てくる波面もありま す。後者はあちこち徘徊してくるために、さすがに疲れて、弱い光にしかなりません。手前から出てくる強い散乱光を消して、奥から出てくる弱い散乱光だけを 捉えることができれば、深部の血流マップを観察できそうな気がしますが、これがなかなか難しく、我々の重要な研究テーマの一つになっています。