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LayerViewに表示される「MV, MT, MA 」とは何ですか? またMV-MTというパラメータもあるようですが、MVと何が異なるのですか?

MA・MV・MT は、LSFG-NAVI が視神経乳頭(ONH)内の血流を「どの領域の MBR(mean blur rate:血流速度の相対指標)を平均した値か」で分類した 3 つの基本パラメータです。全体・血管・組織の血流を分けて評価できるため、健常人の体循環の評価や糖尿病、緑内障などの疾患評価に非常に有用です。血管・組織の血流を分ける手法は目的に合わせて複数(ex: Cross sectional analysis, histogram analysisなど) あります。

 

LayerViewの画面の様子

LV_2

STIN解析時は、上側/下側/耳側/鼻側それぞれで、MV, MT, MA, MV-MTが表示されます。

 

MA / MV / MT の意味と役割

LSFG-NAVI の視神経乳頭解析では、楕円ラバーバンドで囲んだ領域を 血管部分(Vascular area) と 組織部分(Tissue area) に自動分類し、それぞれの MBR を平均化して数値化します。

MA(Mean of All area)

  • ラバーバンド(RB or ROI)内の全領域の MBR 平均値 

  • 血管+組織の総合的な血流指標 

  • 視神経乳頭全体の血流状態を俯瞰する際に使用

  • 再現性が高く、臨床研究でも最もよく使われる指標のひとつ

臨床利用する際に、検者が簡便に領域識別することができ、安定した数値が得られます。大体健常者で血管領域は乳頭全体に対して40%前後の領域を占めますが、血管領域は組織領域に比べてMBRが高く、MAに対して大きく寄与します。血管領域が収縮したりすると血管を領域を占める割合(ARBSと呼んでいます。)が小さくなり、MAが実際の血流量変化以上に小さくなります。大血管を流れる血流が少なくなるとより鋭敏にMAが反応します。例えば、不整脈、心不全などで網膜大血管の血流が減少しているような場合には、MAに変化がみられるようになります。

MV(Mean of Vascular area)

  • 血管領域(網膜血管)の MBR 平均値

  • 視神経乳頭内の血管成分の血流を反映

   中心眼動脈・静脈、背景組織血流を含みます。中心眼動静脈が組織血流に比べての血流が多いので、中心眼動静脈血流が支配的です。

  • 血管径や血管密度の影響を受けやすい

  • 循環障害の評価で重要

心臓から送り出される血流がダイレクトに眼動脈を流れ、中心動脈に流れ込んでいるので、中枢側の血流動態を反映している数値だと考えられます。視神経乳頭を囲ったラバーバンドは中心眼動静脈を含んでいます。中心眼動静脈は太い血管であり血管径の方向(横断方向と奥行方向)に大きな流速分布を持ちますので、ラバーバンドで捉える血管領域のMBRはこの変化する流速分布をとらえた数値になります。本来、大きな血管を流れる血流量は、血管の断面積×平均流速で表されますが、MVでは奥行方向の情報を維持したまま横断方向の距離で除している数値になるので、血流量というより平均流速に寄った数値になると考えられます。実際、相対的な血流量であるTRFIを血管径で除したTRFI/WとMVがよく相関している(R^2=0.615, p<0.0001)報告1もあります。一概にMVが高いからと言って、網膜大血管の血流量が高いということではなく、MVが高いということは血管径が細く血流速が高い場合もあります。中心動静脈は末梢側に循環するための途中経路ですので、実際の血流量をとらえるには乳頭外に広がる網膜血管のRFVを積算したTRFIや末梢側の血流の変化に注目するほうが良いかもしれません。

 

MT(Mean of Tissue area)

  • 組織領域(乳頭組織)の MBR 平均値

  • 視神経乳頭の実質(神経線維層・グリア組織など)の血流を反映

  • 血管を除いた組織の循環状態を血流量として評価できる(個体間を比較するときには、色素の違いに注意です。)

  • 緑内障の進行や ONH の構造変化との関連が研究されている

流入経路が眼動脈から分岐した短後毛様体動脈を経由して視神経乳頭組織領域に供給される血流を表します。中枢側の血流を表すMVに対して抹消側(脈絡膜側)の血流を表すので抹消側の血流による栄養状態を観察することができます。このMVは血流の絶対量とMTとが相関する報告2,3が複数あります。なぜMTが血流量に相関するかという疑問がありますが、検出している画素が全体の血管構造を含んでいるのか、一部であるかという違いがあるという点があげられます。 MTの場合は一画素に複数の毛細血管を含んでおり複数の毛細血管を見ていることになります。一方でMVを構成する一画素は血管構造の一部であり、MVを構成するそれぞれの画素は対象となる血管の血流を代表数値ではありません。MTを構成するそれぞれの画素がすでに毛細血管の構造を含めた平均値を代表しているので、これを平均したMTというパラメータは結果、対象領域の絶対血流量と相関したと考えられます。

MV‑MT とは何か

MV‑MT は、MV(血管領域の血流)から MT(組織領域の血流)を差し引いた値で、 視神経乳頭内の “血管成分の優位性” を強調して見るための派生パラメータです。

背景の組織血流分を差し引いているので、MVよりもより中心動静脈の変化を鋭敏にとらえているパラメータでもあります。前述したようにMVが高い場合に、必ずしもMTも上昇するわけではありません。実効的な血流量が少ない(=末梢側へ到達する血流量が少ない)場合でも、動脈が収縮して血流速が高くなりMVが上昇している可能性があります。実際、MTとMVの経路は短後毛様体動脈からの流路と、網膜中心動脈の経路と異なりますが、末梢と中枢の血流の対比という意味では、比較することに意味はあるはずです。

この際、組織血流であるMTを減弱したMV-MTはより中枢側の血流を反映した数値であると考えられます。

MV-MTが使われる理由

  • 血管と組織のバランスを見るため

視神経乳頭は血管と組織が混在しており、 どちらがどれだけ血流を担っているかを知ることが重要です。MV‑MT はそのバランスを一目で示します。

疾患評価で有用な可能性

研究では、

  • 緑内障

  • 視神経症

  • 循環障害

などで MT が低下 する傾向が複数報告されています。一方で正常眼における MV・MT の個体差要因を解析した研究7があり、MT と MV が独立した循環指標であることが示されています。MTとMVが独立であるということは MV‑MT は 組織血流の低下を相対的に捉える指標として使われるということになります。

■ 定義

MV-MT=MV(血管MBR平均)−MT(組織MBR平均)

つまり、

  • 血管の血流が組織よりどれだけ高いか

  • 血管の血流優位性(大血管の血流の「分布優位性」や「解剖学的な支配・栄養血管」)を数値化した指標

 

4つのパラメータの比較

パラメータ 対象領域 意味 主な用途
MA 全領域 視神経乳頭全体の血流 全体評価、再現性が高い
MV 血管領域 網膜血管の血流(中枢側、網膜中心動静脈を反映) 血管成分の循環評価
MT 組織領域 乳頭組織の血流(抹消側、短後毛様体動脈側からの供給であり脈絡膜側の組織血流を反映) 組織循環、緑内障評価
MV-MT 血管領域

網膜血管の血流(背景組織血流を除外)

CRVO4,5, BRVO, 視神経症,

体循環中枢側評価, 循環障害

 

臨床的なポイント

● 再現性が高い

MA・MV・MT はいずれも 同一検者内・検者間で高い再現性 が報告6されています。 (例:緑内障群で MA CV=5.3%、MV CV=4.2%、MT CV=2.5%)

  • 緑内障では MT(組織血流)の低下 が特に注目されることが多い

  • 血管領域(MV)よりも組織領域(MT)の変化が構造変化と相関する可能性があるという報告も存在

● Pulse waveform 解析との併用

MT・MV は脈波解析(Blowout Score など)にも使われ、 視神経乳頭の循環動態をより詳細に評価できる7

 

血管・組織の血流を分ける手法

  • Cross-sectional analysis
    • 組織血流(MT)を優先的に抽出する手法: 用途として抹消側の組織血流を安定して抽出したい場合に使用します。疾患例として緑内障や、健常人の抹消側の血流動態を観察したい場合に向きます。
  • Histogram analysis
    • 血管領域(MV)を優先的に抽出する手法: 用途としてできるだけ組織血流が介在しないように大血管を安定して抽出したい場合に使用します。大血管から抹消の血管抵抗を測定するTCRの計算時にはHistgram analysisを使用しています。疾患例としてTCRを活用するCRVO, BRVO, 加齢による動脈硬化、健常人の大きな血管側の血流動態を観察したい場合に向きます。
  • Manual
    • 手動で血管・組織領域を区分したいときに使用します。視神経乳頭に設定したラバーバンドの内のMBRを一つのしきい値を堺に区分する手法になります。しきい値よりもMBRが高いほうが血管、低いほうが組織血流として計算します。

References

  1. Michelle R. Tamplin, Kimberly A. Broadhurst, Anthony H. Vitale, Ryuya Hashimoto, Randy H. Kardon and Isabella M. Grumbach
    Longitudinal Testing of Retinal Blood Flow in a Mouse Model of Hypertension by Laser Speckle Flowgraphy
    Translational vision science and technology, 10(2), 16-16, doi:10.1167/tvst.10.2.16, 2021.
  2. Hiroaki Takahashi, Tetsuya Sugiyama, Hideki Tokushige, Takatoshi Maeno, Toru Nakazawa, Tsunehiko Ikeda, Makoto Araie
    Comparison of CCD-equipped laser speckle flowgraphy with hydrogen gas clearance method in the measurement of optic nerve head microcirculation in rabbits
    Experimental Eye Research(2012), http://dx.doi.org/10.1016/j.exer.2012.12.003
  3. Naoko Aizawa, Fumihiko Nitta, Hiroshi Kunikata, Tetsuya Sugiyama, Tsunehiko Ikeda, Makoto Araie and Toru Nakazawa
    Laser speckle and hydrogen gas clearance measurements of optic nerve circulation in albino and pigmented rabbits with or without optic disc atrophy.
    Investigative Ophthalmology and Visual Science, IOVS-14, 2014. doi: 10.1167/iovs.14-15373
  4. Matsumoto Makiko, Suzuma Kiyoshi, Fukazawa Yoshiko, Yamada Yoshihisa, Tsuiki Eiko, Fujikawa Azusa and Kitaoka Takashi
    Retinal blood flow levels measured by Laser Speckle Flowgraphy in patients who received intravitreal bevacizumab injection for macular edema secondary to central retinal vein occlusion.
    Retinal Cases and Brief Reports, 8(1), 60-66, 2014.
  5. Makiko Matsumoto, Kiyoshi Suzuma, Fumito Akiyama, Kanako Yamada, Shiori Harada, Eiko Tsuiki and Takashi Kitaoka
    Retinal Microvascular Resistance Estimated from Waveform Analysis Is Significantly Higher With a Threshold Value in Central Retinal Vein Occlusion
    Translational Vision Science and Technology, 9(11), 4, doi:10.1167/tvst.9.11.4, 2020.
  6. 小川 莉奈、斎藤 彩、江黒 友春、永野 幸一、山口 純、庄司 信行
    レーザースペックルフローグラフィーにおける視神経乳頭血流の再現性および一致性
    日本視能訓練士協会誌, 50, 129-134, doi:10.4263/jorthoptic.50F115, 2022.
  7. Ayako Anraku, Nobuko Enomoto, Goji Tomita, Aiko Iwase, Takashi Sato, Nobuyuki Shoji, Tomoaki Shiba, Toru Nakazawa, Kazuhisa Sugiyama, Koji Nitta and Makoto Araie
    Ocular and Systemic Factors Affecting Laser Speckle Flowgraphy Measurements in the Optic Nerve Head
    Translational Vision Science and Technology, 10(1), 13, doi:10.1167/tvst.10.1.13, 2021.

Revision:20260211