グラフに表示される「Skew(スキュー)」とは何ですか?

一言でいえば、血流の波の勢いの強さを表す指標です。

動脈では心臓から送り出された血流の勢いが強く、波形が左寄りになります。一方で、波の勢いが弱くなると徐々に波形のピークは後退します。末梢の血管床を経由し静脈に戻ってきた波形は勢いが減弱し、Skewは低くなります。

この波形の形に注目して勢いを数値化したパラメータがSkew(スキュー)です。Skewの数値が高いほど勢いがあり、低い場合は勢いが失われている状態です。

例えば観測点に対して、複数の経路を通って血流が供給されていたとして、その経路が長ければ血流の勢いが維持されてその観測点にはSkewが高いまま血流が到達します。一方で迂回路を経由して長い距離を経た血流は、勢いがなくなってSkewが低くなってしまいます。観測点での血流の勢いを数値化しているので、心拍により押し出された血流が観測点までしっかり勢いをもって到達しているか判断できます。

また側副血行路を経由した血流は、経路長が通常よりも短いため、静脈でもSkewが高くなることがあります。

技術的な説明を少ししますが、Skewは体循環の勢いの状態を表す指標として開発された値で、血流波形の形を数値化したものです。

Skewは統計学における、分布の非対称性を示す歪度(skewness)から来ており、
主に血流波形の偏り(波形の概形)よって値が変わります。

Skew>0
Skew=0
Skew<0
Skew>0
Skew=0
Skew<0

波形形状が左右均等の場合、Skewは0となり、それを基準として左に偏る場合、Skewは正の値を持ちます。
逆に、右に偏る場合、Skewは負の値を持ちます。また、偏りが大きくなればなるほど、Skewの絶対値は大きくなります。

動脈性の血管においては、すばやく立ち上がることから、Skew>0となります。
静脈性の血管においては、動脈性の血管と比較してゆるやかに立ち上がることから、動脈Skew > 静脈Skewとなります。


Skewはピークからの下がり方によっても値が変わります。
ピーク位置が同じ場合でも、ピークからの低下が早ければ早いほど、Skewは大きくなります。

Skew変動
Skewは大きくなる
Skewは小さくなる


Skewは年齢と相関があり、高齢になるにつれてSkewが大きくなることが報告されており、
動脈硬化の指標となりうるポテンシャルがあると考えられています。

年齢とSkew

Skewの算出方法や年齢との相関に関しましては、下記論文に詳細が示されております。
ご参照下さい。

藤居 仁,岡本兼児, レーフントゥイ, 高橋則善
眼科用レーザースペックルフローグラフィーの製品化
レーザー学会第377回研究会「レーザー医学・生物学応用」, 2008.09.12


最近の報告

群馬大学医学部眼科学教室 渡辺五郎
血流測定装置 Laser speckle flowgraphy
眼科画像診断-最近の進歩-(眼科 2010年9月臨時増刊号), Vol.52,No.10 : 1345-1351, 2010.

東京女子医大 小暮朗子,田村明子,三田覚,堀貞夫
網膜静脈分枝閉塞症における静脈血流速度と黄斑浮腫
第64回 日本臨床眼科学会 抄録集 105,2010.